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番外編賑やかなひととき

「うわぁ~~出た~~!」 信孝さんの悲鳴が聞こえてきた。 「相変わらずここは賑やかだな」 「なんせ下は零歳児から、上は七十歳代まで二十人近くが同じ屋根の下で暮らしているからな」 「アパートに帰っても一人だから話し相手もいないし、飯も一人だから味気がない。酒を呑んで寂しさを紛らわせようとしても余計に寂しくなる」 ぬるめのカフェオレを一口飲む国井さん。 「それならアパートを引き払って龍一家で暮らせ。俺から裕貴に頼んでやる」 「卯月、冗談も……」 「大概にしろ、だろ?こんなことを冗談で言えるか。これでも大真面目に言ってる。デカも一人の人間だ。ちゃんと寝てるか?飯は食ってるか?このままいったら肉体的にも精神的にも参ってそのうちぶっ倒れるぞ。でもあれだな。変な噂が流れるとのちのち面倒だから、引っ越すのではなく、週一だけでも泊まりに行ったらどうだ?心の手料理、なかなか旨いぞ」 「本当にいいのか?」 「いいに決まってる。チカだってそっちのほうが安心だろうよ。例えばの話だ。お前が具合が悪く一人で寝込んでいるとする。チカは心配で仕事も手に付かなくて、些細なミスをする。小さなミスならすぐに挽回出来るだろうが、取り返しの付かないミスだったらどうする?」 クスリと笑う国井さん。 「どうして笑う?」 「卯月も千里と同じで何でもお見通しなんだな。嘘もつけないし隠し事も出来ない。卯月の言う通りだ。全部当たっている」 国井さんが降参とばかりにため息をついて頭をくしゃくしゃと掻いた。

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