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番外編賑やかなひととき

「玲士、いつまでそこにいるつもりだ。遠慮せずとも入って来たらいいだろう」 彼が廊下に向かって声を掛けると、 「なんでいるのが分かったんですか?」 戸が静かに開いて玲士さんが部屋に入ってきた。 「気配はずっと感じていた。積もる話しもあるだろうから二人きりにしてやる」 彼が立ち上がろうとしたら、 「待て」 咄嗟に国井さんが慌てた様子で彼の手を掴んだ。 「結婚式を挙げるのは俺じゃない。お前たちだろ?」 「経験者としての意見が聞きたい」 「未知が寝ないで待っているんだ。手短に頼む」 「分かったよ」 国井さんがすっと手を離した。 「都内で式を挙げる場所がなかなか見付からないというならハチの実家のペンションを貸し切って式を挙げればいい。りんりんとフーがそうしたようにな。ダメ元でハチに頼んでみたらどうだ?十月あたりが紅葉も綺麗だろうからいちばんいい時かも知れない」 真剣な眼差しで彼の言葉に耳を傾ける国井さんと玲士さん。 「善は急げだ。ハチに頼んだら、あっという間に十月十一日に決まった。まさか二日連続で結婚式を挙げることになるとはな。これっぽっちも思わなかった。未知、何かと出費がかさんで家計のやりくりが大変だと思うが頼むな」 「人生一度きりのおめでたいことだもの。何とかするから心配しないで」 「そう言ってもらえて嬉しいよ」 彼があたりをキョロキョロと見回した。

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