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番外編福光家の呪い

「びっくりした。頼むから驚かせないでくれ。寿命が縮むかと思ったぞ」 「悪いな。話しに夢中になっていたから終わるのを待ってから声を掛けようかとは思っていたんだ」 そこで言葉を一旦止めるとぷぷっと吹き出した。 「普通笑うか?」 「俺と似たようなことをチカたちに話しているからそれでつい。悪気があった訳じゃないから許してくれ」 信孝さんが軽く頭を下げた。 「ナオの様子は?」 「普段と変わらないが、俺には無理をして普段通り過ごしているとしか見えない」 「そうか」 吉崎さんが心配そうに眉を寄せると深いため息をついた。 「王《ワン》劉帆《リュウホ》と同じ飛行機に乗って帰国したんじゃないかそう思って動画に日本人女性が写っていないか目を凝らして探した。この女性、みずほさんに目のあたりがよく似ていると思わないか?」 信孝さんが携帯の画面を操作し吉崎さんに見せた。 「さすが社長だ」 「社長?ノブくんが?」 チカちゃんが驚いたような声を出した。 「言ってなかったか?」 「うんアタシ、てっきり菱沼金融の社員かと。ごめんなさい」 「謝ることはない。人材派遣会社と不動産会社を経営している。吉崎は俺の右腕として頑張ってくれている」 「じゃあつまり菱沼組のフロント企業ってこと?」 「まぁ、そうなるかな。でも菱沼組の若頭補佐になることに一切躊躇はなかった。オヤジに必要とされて嬉しかったし、何よりオヤジの側にいれるから。それにオヤジの……」 「ストップ」 チカちゃんが右手をあげた。

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