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番外編福光家の呪い

「礼の姉といえば、ナオを酷い目に遇わせていた仲良し三姉妹のうちのひとりか。まさか王と同じ飛行機に乗っていたとは。さすがはねえさんだ。よく気づいたな」 「見付けたのは僕でなくて信孝さんです」 「でもねえさんも何かを察したんだろ?土曜日のショッピングセンターは家族連れで賑わっていただろうし、監視カメラも至るところにあった。これだけ人の目があるところで普通は発砲はしない。顔もすぐにバレるし関係のない人たちを巻き込むリスクの方が大きすぎるからな。これは素人の仕事だ。プロの殺し屋の仕事ではない」 さっそくパソコンを持ってきてテーブルの上に置いて動画を再生する柚原さん。橘さんも茶碗を洗う手を止めて隣に腰を下ろした。そこへそろりそろりと足音を忍ばせて鞠家さんが背後から近付いて来た。目が合うと悪戯っぽい笑みを浮かべしーと人差し指を唇の前に立てた。柚原さんを驚かせようとしているみたいだったけど、 「バレてるぞ」 呆気なく見付かってしまった。 「さすがは柚原だ」 「あとで幾らでも話し相手になってやるから手伝ってくれ」 「何をすればいい?」 「王が来日したとき礼の姉も同じ飛行機に搭乗していた。三十秒後にこの女に声を掛ける男がいる。ソイツの唇の動きと、女に名刺を渡すから男の名前を調べてくれ」 「分かった。任せてくれ。スマホにその動画を保存しておいて良かった。削除しなくて良かった」 鞠家さんがスマホを胸ポケットからさっと取り出した。 「なんで今ごろ?」 「ねえさんが気になることがあるそうだ」 「ねえさんの直感はよく当たるからな。マーの頼みだ、俄然やる気が出てきた」 鞠家さんがルンルン気分でスマホを操作しはじめた。

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