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番外編福光家の呪い

「亜優、バーバっておいで」 「遥琉さん僕が」 「たまには父親らしいことをさせてくれ。それにここには消毒液の匂いが駄目なヤツがいるから。そういえば亜優も苦手だったな。まぁ、どうにかなるだろう」 救急箱をぶら下げて亜優さんを洗面所に連れて行ってくれた。 地竜さんが、 「変われば変わるものだな」 感慨深げにしみじみと呟いた。 「亜優は生きる屍だった。でも卯月と未知の息子になってからは、会うたびに表情がどんどん明るくなっていって、よく笑うようになった。兄弟と再会し、玲士と出会い、誰かをはじめて好きになって、ますますきれいになっている。ここに連れてきて良かった。玲士、亜優を頼んだぞ。卯月が婿として見込んだきみなら安心して亜優を任せられる」 地竜さんが玲士さんの肩に軽く手を置いた。 「俺、プレッシャーに弱いんです。ですからあの……その……」 「そうか、それは悪かったな」 しどろもどろになって答える玲士さんに地竜さんがぷぷっと吹き出した。 「すっかり話しが脱線してしまったな。玲士を呼んだのはこの声に心当たりがないかと思ってな」 「声……ですか?一度聞いたら耳から離れない、そんなに特徴的な声なんですか?」 「あぁ、そうだ。喉まで出かかっているが、どうしても思い出せないんだ」 鞠家さんから携帯を受け取った玲士さん。目を閉じて耳に携帯をあてた。何度も繰り返して再生したのち、 「俺、多分ですけど聞いたことがあります」 ぽつりと呟いた。

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