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番外編開けてはならないパンドラの箱
「姉妹揃って千里眼だと何度か耳にしたことがある。だから敵に命を狙われる。なんのことかとさっぱり分からなかったが、こういうことだったのか。やっと分かった」
「あの、吉崎さん……」
「未知さん、やはりあなたは千里眼だ。何でもお見通しだ」
吉崎さんがくすりと笑った。
「当てずっぽうで言ったのに本当だったんですか?」
「あぁ、そうだ。礼にはナオの他にもう一人弟がいる」
福光家の闇は深い。開けてはいけないパンドラの箱だ。でも開けなければ先へ進めない。
洗面所の前を通り掛かったとき、
「やだもう~~これだからいやなのよ」
チカちゃんの苛立った声が聞こえて来たから何事かと驚いて中を覗くと、
「あらやだ。すっぴんなのよ~~見ないで~~」
目が合うなり両手で顔を覆うチカちゃん。
「チカちゃんは化粧していてもしていなくてもすごく綺麗です。肌も肌理が細かくてすべすべしているし。だから隠すことないです」
「ありがと未知。梅雨時はお肌がむくんで太って見えるし、髪が湿って思い通りにセット出来ないし、気圧の変化が激しいから片頭痛がするし、アタシね梅雨時が一番苦手なの。ひまちゃんゴメンね、驚いたよね?」
僕の腕のなかにいる陽葵に笑顔で話し掛けるチカちゃん。指の腹で頬をそっと撫でようとしたら、陽葵の小さなお手手が伸びて来てチカちゃんの指をぎゅっと掴んだ。
「いやぁ、もう、かぁいい!それにそんなに見つめないで、恥ずかしくなっちゃう」
陽葵の愛らしい仕草にすっかりメロメロになるチカちゃん。目尻が下がりっぱなしになった。
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