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番外編開けてはならないパンドラの箱
「しまった。名刺を忘れた」
男性が頭を掻きながら何気にテーブルの上を見ると吉村さんの名刺があった。
「ちょうどいいのがあるじゃないか」
ペンをポケットから取り出すと、吉村さんの名前の上に【弁護士 斎藤翼】と書いた。
「吉村と同じ阿部法律事務所で弁護士をしています斎藤です。卯月未知さんの噂はかねがね伺っています」
「あのな斎藤……」
「そう怒るな」
「誰が怒ってるって?斎藤が怒らせるようなことをするからだろ」
「そうか?それは分かるかったな」
斎藤さんが愉しそうに笑いだした。
僕だけかもしれないけど、ふたりのやり取りは痴話喧嘩にしか見えなかった。ふたりの仲の良さが会話の節々から伝わってきた。
「お二人は仲がいいんですね」
「は?冗談だろう。誰がこんな手のかかるヤツと」
二人の声が見事にハモった。
「あ……」
吉村さんと斎藤さんが気まずそうに顔を合わせた。
「見てて分かります」
「未知さんや橘さんの足元には到底及びません」
「喧嘩もせず仲がいい。夫婦円満の秘訣みたいなものがあれば是非ご教授願いたい」
「夫婦円満の秘訣と言われても……」
「急に言われてねえさんが困っているだろ」
ヤスさんが助け舟を出してくれた。
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