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番外編開けてはならないパンドラの箱
「柚原はカミさんの尻に敷かれたいと自ら志願しプロポーズした。オヤジはねえさん以外眼中にない。ねえさんが隣にいてくれて笑ってくれる。それが一番幸せみたいだ。だからねえさんを守るためなら何でもできる。オヤジの生きざまは俺らの手本だ」
聞いているほうが恥ずかしくなるような言葉をさらりと口にするヤスさん。
「未知さんは幸せ者ですね」
吉村さんがやさしく微笑んだ。
「最近オルコスという名前の恋活・婚活・出会い探しマッチグアプリで被害を訴える人が急増しています。知らないアドレスからのメールや電話には十分に気を付けて下さい。犯罪はすぐ身近に潜んでいます。お子さんが知らぬ間に巻き込まれることも十分にあり得ますから」
斎藤さんが携帯を操作し画面を見せてくれた。
「オルコスのサイトです。誕生したカップルが語るリアルな体験と書かれてある写真を見て下さい」
斎藤さんに言われ画面を覗き込んだ。マスクをしているけどそこに写っていたんは紛れもなく樋口さんだったから驚いた。
「誰、この人?」
思わず変な声が出てしまった。樋口さんの隣で笑う白髪まじりの男性は義夫さんではなかった。
「あ、そうか。既婚男性は登録することが出来ないんだ。だから義夫さんがいないんだ」
「それがオルコスは身分証の提示が不要なので既婚者が登録していてトラブルに発展しています」
「樋口さんはもしかしてサクラをしていたんですか?」
「その可能性は十分にあります。もっと問題なのは二十歳だと年齢を偽り美人局をしている女子高生がいるということです。オルコスを隠れ蓑に犯罪が行われています」
「サイトの運営会社はなぜこの問題を放置しているんですか?」
「それはですね」
吉村さんと斎藤さんの表情が一瞬だけど険しくなった。
「もしかしてシェドが関係しているとか……」
それしか考えられなかった。
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