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番外編開けてはならないパンドラの箱
「みゆちゃん、ままたんにだっこ」
遥香に先を越されると思ったのか、隠れていためぐみちゃんの背中からぴょんと飛び出すと、両手を大きく広げた。
「幸はずっとままたんに抱っこしてもらっていたでしょ?次はハルお姉ちゃんの番でしょ?赤ちゃんじゃないだからわがままいわないの」
「やだ、やだ」
頬っぺをこれでもかと膨らませ、ぶんぶんと顔を横に振る幸ちゃん。
「みゆちゃん、あかちゃんだもの」
ムスっとしてめぐみちゃんを睨み付けた。
「ハルちゃんおねえちゃんだもの、がまんする」
遥香が唇を噛み締めた。
「幸ちゃんだっけ?おじちゃんっておいで」
斎藤さんが手招きした。
警戒心マックスでじっと斎藤さんの顔を見る幸ちゃん。斎藤さんは変顔をしたりしてなんとか幸ちゃんの気を引こうとしていた。
「おじちゃんっておもしろい」
幸ちゃんがお腹を抱えて笑いだすと、遥香もつられて笑いだした。
「斎藤さんも子ども好きなんですね」
「はい。弁護士になっていなかったら今ごろ小学校の先生になっていたと思います」
斎藤さんに抱っこしてもらい、さっきまでブスくれていたのが嘘のように幸ちゃんはニコニコしていた。
「吉村さん、斎藤さん、せっかくですからご飯を食べていったらどうですか?予定があるなら無理にとは言いませんが」
帰ろうとしていたふたりを呼び止める橘さん。
「え?本当にいいんですか?」
斎藤さんの目がきらきらと輝いた。
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