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番外編開けてはならないパンドラの箱
「あのな斎藤、少しは遠慮するということを覚えたらどうなんだ?社交辞令を真に受けるやつがいるか」
吉村さんがやれやれとため息をついた。
「あのな吉村、これだけは反論させてくれ。橘さんの作る料理は天下一品。そうそう食べれるものじゃないんだぞ。今日断ったら最後。もう二度と誘ってもらえない。それに……」
そこで言葉を止めると足元をそっと見た。太惺と心望が右手の親指をしゃぶりながら、もう片方の手で斎藤さんのズボンをぎゅっと握りしめていた。
「見ての通り両手に花で動けないし、卯月さんと優先生ともっと話したいし、子どもたちとも遊びたいし、この通りだ。頼む、吉村」
両手を合わせて頭を下げる斎藤さん。
「もうしょうがないな。分かったよ」
一瞬だけ不満そうな表情を見せた吉村さんだったけど最後には折れた。
廊下でチカちゃんと国井さんとすれ違ったとき、
「あれ?」
吉村さんが立ち止まり、それこそ穴が空くくらいチカちゃんの顔をじっと見た。
「やっぱりそうだ。千景だ。いつの間にか女性になっていたから一瞬誰かと思ったけど。千景久しぶり。俺が誰か分からないよな?」
「ストップ!ここまで出かかっているの」
チカちゃんが待ったをかけた。
「もしかして朔?あら、やだ。こんなところで会えるなんて。奇遇ね」
「それは俺の台詞だ。久しぶり」
「うん、久しぶり。元気だった?」
「あぁ」
「今何してるの?」
「弁護士をしている」
「えぇ~~!うっそ~~!」
チカちゃんの甲高い声があたりに響いた。
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