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番外編開けてはならないパンドラの箱

「俺たち男同士ですよ。何を言っているんですか、冗談も休み休み言ってください」 ギクッとしたのち作り笑いをする吉村さん。 「こんなこと冗談で言えるか。人を好きになるのにそんなの関係ないだろ?好きになった人がたまたま同性だった、それだけのことだろ?違うか?」 「国井さんが思っているより簡単ではありません」 「それならただ指を咥えて見ているだけか?斎藤が他の人を好きになるのを黙って見ているだけか?何もしなかったら何も始まらない。人生は一度きりだ。諦めたらそこで終わりじゃないのか?」 熱のこもった国井さんの言葉を吉村さんは黙って聞いていた。 「ここで再会出来たのもきっと何かの縁だ。吉村、次に会えたとき嬉しい報告を待ってるぞ」 やさしく微笑みかけると肩をぽんぽんと軽く叩いた。 「パパ、国井さん、チカちゃん、みんな、ごはんたべよーー」 一太と奏音くんが呼びに来た。 「おう」 彼が右手をあげた。 「斎藤さん、行こう」 「チカが吉村に用があるそうだ。すぐに終わる」 彼と国井さんが斎藤さんを広間へと連れていった。 「アタシに出来たんだもの。朔もきっと出来るわ。小指を出して」 「小指?」 「そう。朔の恋が叶うようにおまじないを書いてあげる」 いつの間に準備したのかチカちゃんがポケットからピンクのペンを取り出した。 「小指の爪にハートを書くおまじないはね、もともと高校生が恋のおまじないとして実践していたみたいよ。好きな彼と両思いになりたい、告白をして上手くいきますようにという気持ちを込めるの」 小指の爪にピンクのペンでハートを書くチカちゃん。

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