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番外編開けてはならないパンドラの箱
「物は試しに一週間だけつけてみたら?アタシ、朔にプレゼントするから」
「国井さんにその、それ、付けているのバレたとき……」
しどろもどろになる吉村さん。
「てっきり白けられると思ったんだけど、それがね」
当時のことを思い出したのかくすりと笑うチカちゃん。
「斎藤さんもダーリンと同じ性癖の匂いがぷんぷんするから、最初は驚くけど、可愛いねって、朔にすごく似合っているよって言ってくれるわ。断言してもいい」
「ありがとう千景。そこまで心配してくれて。連絡先を交換させてくれ。国井さんの許可はもらってある」
「朔は相変わらず変なところが真面目ね。律儀なところも全然変わってないし」
「遅かったから心配したぞ」
「すまない。斎藤、それどうした?」
本日の主役とでかでかと書かれた紅白のたすきをかけている斎藤さん。かなり目立つ。
「子どもたちから付けてくださいって渡されたんだ」
ふたりがそんな会話をしていたら、
「よしむらさん、つけてください」
遥香と幸ちゃんがニコニコと満面の笑みを浮かべながら近付いてくると、斎藤さんがかけているのと同じたすきを差し出した。
「受け取らなかったら泣かれるぞ」
「わ、分かったよ」
吉村さんがしゃがむと、
「つけてあげる」
遥香がつま先立ちになり吉村さんの肩にたすきをかけた。
「ありがとう」
「カッコいい!」
幸ちゃんが両手をパチパチと叩いた。
「吉村さんと斎藤さんの席はこっちだよ」
子供たちに手招きされ、彼の隣に腰を下ろした。
「国井とチカが帰るから送別会を行う。用事があるのに付き合わせて悪かったな」
「いえ、大丈夫です。こんな大勢で夕食を囲むなんてはじめてなので緊張していますが、誘っていただき嬉しいです」
「俺も嬉しいです。子供たちみんな人見知りせず、本当に可愛いです」
ふたりが相好を崩した。
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