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番外編開けてはならないパンドラの箱

「遥琉さんはここにいて。僕が行ってくる」 国井さんたちのあとを追い掛けようとした彼の手をとっさに掴んだ。 「ヤスさんの大事なひとのこと、僕全然知らないでしょう?四季さんも僕と同じでいわれようがない差別と偏見を受けてきたんでしょう?二年前になにあったのが聞いてはいるけど詳しいことまでは知らない。四季さんにもいつか両性に生まれてきて良かった、笑顔でそう言ってもらいたいし、ナオさんみたく何でも話せる友達になりたい」 「未知がそこまで言うなら、分かったよ。子どもたちのことは心配するな。陽葵も寝ているし。四季のこと聞いてこい」 「ありがとう遥琉さん」 廊下に出ると吉村さんが正座をしていたからびっくりした。 「未知さんが四季の友だちになってくれる。これほど心強いことはないです。ヤスさんもそうですが、未知さんも心配してもらって、四季は幸せ者です」 手の甲で目元をごしごとと拭う吉村さん。 「あれ、変だな。泣くつもりはなかったのに。すみません」 はにかんだような笑みを照れながら浮かべた。 「国井さんは知らなかったんですか?」 「恥ずかしながら聞いてはいたが詳しいことまでは知らなかった。その話しになると同僚たちの口が急に重くなるんだ。出来れば避けて通りたい、その話しにはなるべく触れたくない、そんな感じだった。チカがおっさんを問い詰めて何があったのか聞いたことがある。おっさんは差し当たりのないように買い摘まんで話してくれた。ハチとタマとは仕事で何度も会っているのに四季の話しは全然してくれなかった。だから斎藤さんから二年前に何があったのか、いまなにが起きているのか洗いざらい全部聞いてかなり動揺している」 がっくりと肩を落とす国井さんの手はブルブル震え、頬やあご、額には汗が光っていた。

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