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番外編開けてはならないパンドラの箱

「地竜さんも彼と同じで癖っ毛なんですね」 「すきな人も一緒だし、すきな食べ物も一緒。何もかも似てて逆に怖いくらいだ。覃と宋と信孝が聞いていたから怒るかも知れないが、もしかしたら前世で俺たち双子の兄弟だったのかもな」 「良かった」 「何が良かったんだ?」 彼が何気に発した独り言を地竜さんは聞き逃さなかった。 「恋人といわれるんじゃないか、内心ヒヤヒヤした」 「じゃあ前言を撤回しようかな」 「撤回しなくていい」 橘さん同様地竜さんが相手だとどうも調子が狂う彼。朝から和気あいあいとても賑やかだ。 腕を前で組み険しい表情を浮かべテレビから流れるニュースを見る彼と地竜さん。繁華街にあるカラオケ喫茶で違法薬物を売買する外国人がいるとタレ込みがあったみたいだった。 「カラオケ喫茶の店長がまさか元刑事だったとはな」 「ハチが気付かなかったら誰も気付かなかった。追い込まれ自暴自棄になり、丸腰のチカたちに発砲するとはな。正気の沙汰とは思えない」 「所詮は使い捨ての駒だ」 神政会か楮山組のどちらかが裏で糸を引いているとふたりは見ていた。 「俺と地竜は一太たちを小学校に送って、そのまま組事務所に行く。未知、留守番を頼むな。なるべく早く帰る」 ちょうどそのとき、ランドセルを背負った一太が、パパ行くよ、遅れちゃうよと呼びにきた。 「根岸からちょっと見てもらいたいものがあると電話があったんだ。そっちも気になるしな。じゃあ、行ってくる」 颯爽と上着を肩に担ぐと、一太と地竜さんと一緒に出掛けていった。

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