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番外編開けてはならないパンドラの箱
「遥琉と鞠家さんが家を留守にしたとき、必ずといってよくないことが起きるというジンクスがあるのをこ存知ですか?」
「そうなんですか?全然知らなかったです」
「お昼も過ぎましたしそろそろ帰って来る頃ですね」
「ジンクスは破られそうですね」
橘さんと他愛もない会話を交わしながら一緒に台所に立ちお昼ごはんの用意をしていたら、
「ねえさん」
ヤスさんが息を切らして姿を現した。
「どうしたんですか?」
「ナオを見ませんでしたか?」
「三十分くらい前でしたら庭で洗濯物を干していましたよ。いませんか?」
「それがいないんですよ。ナオの身に何かあったんじゃないかと心配になって鍋山に頼み、譲治らと手分けして家のなかをあちこち探してもらっているんですがどこにもいないんです」
「度会さんと紫さんと出掛けたとかはないですか?」
「それならねえさんに一言言っていくはずです」
「それもそうですね」
「そういえばガス会社がさっきプロパンガスを交換しに来ましたよ。その隙に何者かが侵入したとか」
橘さんが何気に発した言葉にヤスさんの表情が変わった。
ナオさんが警備をしていた若い衆に助けを求めたのはそれから数分後のことだった。
「困った人です。真っ昼間からべろんべろんに酔っ払ってタクシー代を払わずに逃げようとしたなんて」
橘さんが額に手をおいてやれやれとため息をついた。
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