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番外編開けてはならないパンドラの箱
「なんでわざわざ福島に来るんですかね。おとなしく東京に留まってくれればいいものを。私はてっきり用事をさっさと済ませて大陸に渡ったものかと思いましたよ」
「僕は会いたくない。金輪際関わりたくないのに……それに僕はもう福光尚也じゃない。もうほっといて欲しいのに……」
上唇をぎゅっと噛み締めるナオさん。
「あとは警察に任せましょう。気になるのは、ここにナオさんがいるのがなぜ分かったんですかね?自宅にはいないということをどこで知ったのでしょう。しかもヤクザの会長宅に押し掛けてくるその度胸、ある意味大物かも知れませんね」
「大物というか、ただの世間知らずのお嬢さんですよ。あれは」
ヤスさんもやれやれとため息をついた。爪で引っ掛かれたのか手の甲には引っ掻き傷がくっきりと残っていた。
「酔いが醒めたらきれいさっぱり忘れているんでしょうね。自分がなぜ警察にいるのかその理由を知ったら顔面蒼白になるでしょうね」
ふつふつと涌き出る怒りの感情を押し殺しながら橘さんが静かに口にした。
「あの人は自分が悪くても絶対に非を認めないし謝らない。いつも福光さんの秘書と弁護士任せだもの」
「蝶よ花よと甘やかされて育てられたのでしょうね」
「僕とは目すら合わせてくれない。話しかけても無視された」
「ナオさん、オヤジと信孝さんがこっちに向かっているからもう少しの辛抱だ。家のまえに集まっていた野次馬は度会さんが蹴散らしてくれたから心配するな」
鍋山さんが様子を見に来てくれた。
「未知ごめんね。僕、みんなに迷惑をかけてばかりいる」
「そんなことないよ。誰もそう思っていないから」
「本当に?」
「うん」ナオさんをこれ以上不安な気持ちにさせないように明るく振る舞った。
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