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番外編開けてはならないパンドラの箱
「アレとかソイツとかあんたでしか呼ばなかったから、名前を呼ばれて声を掛けられたとき何かされるんじゃないかすごく怖かった。タクシーの運転手がいなかったら、今ごろどうなっていたか分からない」
ガタガタと震えながら口元を手で覆うナオさん。
「勇気を出してまわりに助けを求められたナオさんはえらいです」
「そうかな?」
「普通は怖くて声を出すことも出来ないし、動けないはずです」
「あ、そうだ。鍋山さんと壱東さんにありがとうって言わないと。ふたりがすぐに気付いてくれたんだ。まだお礼を言ってなかったから……」
立ち上がろうとしたナオさん。ふらついて後ろに倒れそうになり、とっさに体を支えようとしたら、
「太惺、心望、来ちゃダメ」
寝ていたはずのふたりが起きてきて、ニコニコしながらこっちに向かってバタバタと走ってきたからかなり焦った。慌てて止めたけど、そんなのふたりには伝わるわけなどなく。予想される最悪の事態が脳裏を過った。
「たいくん、ここちゃん待っただよ」
寸でのところで体を張ってふたりを止めてくれたのは譲治さんだった。勢いあまり床にひっくり返る譲治さん。腕のなかにいたふたりはキョトンとしたのち、パチパチと両手を叩き、キャハハと笑いだした。
「ねえさん」ヤスさんも飛んで来てくれて、鍋山さんとふたりでナオさんの体を支えると、橘さんが用意してくれた長座布団の上に静かに下ろしてくれた。
「ぽんぽんと跳び跳ねたら譲治さんのお腹が痛くなりますよ。たいくん、ここちゃん、おいで」
橘さんが両手を差し出すと、
「大丈夫」
譲治さんが首を横に振った。
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