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番外編開けてはならないパンドラの箱
「覃さんごめんなさい。お握りを作ったらいくらでも相手をしますので少し待ってもらってもいいですか?」
「何、お握りだと?なんで分かったんだ?俺が空腹だということを。さすがは未知。俺のためにわざわざ作ってくれるなんて。嬉しいな」
ニコニコと満面の笑みを浮かべる覃さん。
「えっと……その……」
「どうした?腹の調子でも悪いのか?顔が青いぞ」
「どこも悪くありません」
本当は正直に言うべきなんだろうけれど、お握りを楽しみにしている覃さんの顔が青空さんに重なってしまい違うとはどうしても言えなかった。
「遥琉さんの分を先に作ったら覃さんを作りますから待っててください」
「分かった。いつまでも待つ。果報は寝て待てだ」
譲治さんを探していたはずなのに。覃さんのお尻が椅子にねっぱってしまった。
「これから言うことは一人言だ。聞かなかったことにしてくれ。未知は人と人を結ぶ、まさに磁石だ。ここに来れば懐かしい友に、みんなに会える。そもそもの元凶は福光直司が息子の真似事をして資産のほとんどをナオに生前贈与すると決めたことに端を発している」
まさに寝耳に水。聞き間違いじゃないかと自分の耳を疑った。
「福光は医師の忠告を無視し生活習慣を改めることはなかった。糖尿病悪化の影響もあり、心臓の状態が再び悪化。腎機能障害を併発し入院を余儀なくされ、医師から冬までもたないと余命宣告を受けた。血で血を洗う争いがはじまると、福光なりに考えてのことだろ?余計なことを話してすまんな」
「そんなことないです」
慌てて首を振った。
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