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番外編開けてはならないパンドラの箱
「福光家の顧問弁護士を名乗る男がこれから来るそうですよ。謝罪はうわべだだけで、偵察が本来の目的でしょうね。人となりを見るには直接会って話すのが一番ですからね。未知さんの専属弁護士としてもちろん私も同席します。五分もいれば十分です。ひまちゃんがお腹を空かせて泣いているとか適当な理由をつけてさっさと退席してください。あとは私が対処します」
「でも、橘さん。失礼にあたりませんか?」
「大丈夫です。未知さんには魑魅魍魎のたぐいの彼らと同じ空気を吸わせたくないんです。未知さんには汚れていないきれいな空気を吸ってもらいたいんです。それに未知さんを遥琉や地竜さん以外のほかの男に会わせたくないし、見せたくないんです。私の可愛い娘に会わせろなど図々しいのにもほどがあります。100年早いです。身の程をわきまえていただきたい」
語気を強める橘さん。その時廊下からくすくすと笑い声が聞こえてきた。
「橘、ねえさんを怖がらせてどうするんだ?オヤジといいカシラといい、ねえさんのことになるとみんな人が変わる」
「そういうヤスさんだってひとのことは言えないと思いますけど」
「そうかな?」
「そうですよ」
「そんなつもりないんだけどなぁ~~」
笑って誤魔化すヤスさん。
「おっかない顔をしない。スマイルだ、橘」
キリッとした表情でヤスさんを睨み付ける橘さん。
「じゃない。橘さんスマイルです」
ビクビクしながら愛想笑いをするヤスさん。
「話し方が遥琉にそっくりなので驚きました。あ、でも遥琉に似なくていいですよ。世話が焼けるし、こめんどくさい男は遥琉ひとりで十分です。二人も三人もいたら大変です。面倒みきれませんから」
にっこりと微笑む橘さん。それを見るなりヤスさんが、
「弓削がおっかねぇって言っていた意味がやっと分かったような……」
何やら一人言をぶつぶつと呟いていた。
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