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番外編開けてはならないパンドラの箱
「由緒正しい名家である福光家の面汚しですみません。僕だって好きで直司さんの養子になった訳でもないし、礼さんの弟になった訳ではありません。それに四人のお姉さま方に迷惑を掛けた覚えは一切ありません。僕は縣ナオです。福光の家とはもう無関係の人間です」
「だからなんだ?」
白髪の男性がナオさんの言葉を遮り、
「ろくに働きもせずのうのうと生きてられるのはすべて直司のお陰だろうが。違うか?」
ナオさんに考える余地も与えず一方的に責め立てた。
「しょっちゅう熱を出したり、風邪をひいたり、手のかかる子どもが二人もいるんだ。下の子が小学校に入ればナオだって働きに出れる」
「そうですよね。踵を骨折していて歩けないのに、菱沼金融や菱沼コンサルティングで事務のアルバイトをして毎日頑張ってますよ。何も知らない癖によく言えますね」
柚原さんと橘さんが二人に聞こえるようにわざと大きな声で口にした。橘さんは珍しくスーツ姿だった。
「割烹着が普段着なので見慣れないですよね」
「そんなことないです」
目が合うなりクスクスと笑われてしまった。
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