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番外編開けてはならないパンドラの箱
挨拶をしてから橘さんの隣に座った。ナオさんは用意してあった椅子に腰を下ろした。
「めぐみの苑から助け出された子供たちがその後どんな人生を歩んでいるかご存じですか?めぐみの苑の出身だということをまわりに隠してひっそりと生活をしている人や、犯罪に巻き込まれて人生を狂わせられた人、いまだにトラウマに苦しめられ自傷行為をしている人だっています。慰謝料を払えばそれで終わりではないんです。見たこともない大金を手にすれば、それに群がってくる悪い大人たちがいる。優しくされてころっと騙されて、身ぐるみ剝がされて、気付いたときには多額の借金を抱えていて返済のために体を売るしかなくなる。これは実際に起きていることです。長谷川さんという女性を知っていますか?」
僕が話さないと何も始まらない。緊張でガチガチになりながらも言葉を続けた。
「長谷川?知らないな」
「では安藤さんは?」
「安藤って誰だ?知っているか?」
「いや知らないな」
知っているのに知らないフリをする二人。知らぬ存ぜぬ。自分には関係ない。高を括っていた。
「自殺に追い込んでおいて知らない?いい年した大人なのに嘘をつくなんて最低だな」
耳につくハイトーンボイスの声があたりに響き、ハイブランドのスーツに身を包んだ長身の男性がヤスさんと一緒に広間に入って来た。
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