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番外編開けてはならないパンドラの箱
「菱沼金融にも借りに来たんですか?」
「はい。根岸さんは和彦さんに、和真さんにこれ以上迷惑を掛けなるな。闇金から金を借りない方がいい。いずれ椎根に殺される。自己破産をし、一からやり直すように諭したそうですが、この俺に説教するのかと逆ギレして、借りずに帰っていったそうですよ。和彦さんのあとを追いかけようとした伊澤さんに説得しても無駄だ。聞く耳すら持ってくれないと止めたそうです。その日以降和彦さんの足取りはぷっつりと途絶えました」
「根岸さんが?それ本当ですか?」
信じられないといった面持ちでヤスさんが廊下に立ち尽くしていた。
「お、ヤスか?留守番をしてくれてありがとうな。根岸も伊澤も口には出さないが今まで苦労した分和真と四季には幸せになって欲しいと願っている。ヤス、お前と同じだ。だから和真名義で本人に内緒で借金しようとした和彦のあまりの身勝手さに堪忍袋の緒が切れた」
「椎根も森下さんと同様和彦さんを探しているようです。和真さんと、和真さんの姉の結さんに接触するかも知れませんから気を引き締めて和真さんたちを守ってください。ヤスさん、あなただけが頼りです」
「任せて下さい。この命に代えても守りますから」
誇らしげな表情で胸に手をおくヤスさん。
「あの、ヤスさん……」
とっさに服を掴んだ。余計なお世話かと一瞬思ったけど、
「一つだけ約束して下さい。弓削さんを悲しませるようなことだけはしないで下さい。ヤスさんに何かあったとき弓削さんになんて言っていいか分からないから」
「へ?」きょとんとするヤスさん。
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