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番外編開けてはならないパンドラの箱

「あっ……」 口は禍の元。自分の失言に気付いたときにはすでに遅かった。 「な、なんでもないです。さっき言ったことは忘れてください」 なんともいえない気まずい空気を一蹴してくれたのは意外な人だった。 「あ、いた、いた」 てっきり帰ったと思った森下さんがひょっこりと顔を出したから彼が「忘れ物か?」と聞くと、 「根岸さんにお会いしたいなと思い菱沼金融の近くまで行ったのですが、私みたいな小心者には怖くて近寄れませんでした」 びくびくしながら答えた。 「顔は確かに怖いが、うちの舎弟たちはみんな愛嬌があってなかなか可愛いぞ。取って食ったりしないし、いきなり襲うこともない。これは断言できる。あ、でも、二名ほど要注意人物はいるがな。ヤス、森下を根岸のところに連れて行ってくれ」 「はい、分かりました」 「オヤジ、俺が行きますよ」 柚原さんが右手を挙げた。すれ違い様柚原さんがヤスさんの何か耳打ちした。 「遥琉さんどうしたの?なにか気になることでもあるの?」 目を細めて両手をポケットに入れた彼の仕草が気になって思わず声を掛けた。 「ナオが世話になった森下を疑いたくはないんだが、俺やヤスとなぜか目を合わせようとしないんだ。柚原の顔を見た瞬間顔色が一瞬変わった。それがどうも気になってな。思い過ごしならそれに越したことはないんだが……」 腕の前で両腕をきつく組むとボソボソと呟いた。

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