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番外編どっちが子どもなんだかわからないね

「鉄将くんはひとりじゃないもの。奏音くんがいる。それに海翔くんだってどこかで生きている。離れていてもずっと友だちだよ、大きくなったら会いに行くって、そう指切りげんまんしたんだもの。絶対に生きて帰ってくる」 「未知の言う通りだ、信じて待とう」 それまで険しかった彼の表情が少しだけ和らいだ。 帰り際、お前さんはそれで本当にいいか?自分を偽ったまま生きていくのはお前さんの勝手だが、子どもたちは見てないようでしっかり見てるもんだ。ふたりに一生嘘をつき通すつもりか?と伊澤さんに静かに問われた森下さん。ギクリとして立ち止まり振り返ると、 「なぜあなたがここに?」 驚きを隠せない、そんな表情を浮かべていた。 「なんだ、俺を知ってんのか?」 「いえ、知りません。人違いでした」 軽く頭を振ると駅に向かって歩き出そうとしたけど、舎弟たちに通せん坊をされぐるりと取り囲まれた。 「逃げずに伊澤さんの質問にちゃんと答えろや」 「伊澤さんに失礼だろうが」 ドスのきいた低い声で凄まれ震え上がるかと思ったけど、ふんと馬鹿にするように鼻を鳴らすとそっぽを向いた。 森下さんはやはり伊澤さんを知っていた。昔世話になったとだけ短く答えるとあとは黙りを通した。 「卯月さん、森下さんは大丈夫なんですか?」 信孝さんと一緒にナオさんが心配そうに顔を出した。 「心配ない。ヤツは転んでもただじゃ起きない。一見すると優男だが、その実一癖も二癖もある男だ」 彼が間髪入れずに即答した。

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