3302 / 3632

番外編どっちが子どもなんだかわからないね

「で、ここには青空がいるし」 地竜さんがライトを上に向けると、闇の中から青空さんの姿が浮かび上がったから心臓が止まるんじゃないかそのくらい驚いた。 「ついさっきまで玲士がいた。その前は鞠家がいた。その前は……あれ?誰だっけ?忘れた。こんな真夜中に打ち上げ花火とはな。頭の中がお花畑のイカれた野郎がいるとみえる」 青空さんがマグカップをゆっくりと口に運んだ。 「さすがに夜は冷えるな。ぬるくなるものあっという間だ。地竜、すこし代わってくれないか?ハチが隣にいないとどうも調子が狂うんだ。ハチを補給してきたい」 「分かった。ここは俺に任せろ」 青空さんがよっこらしょと言いながら立ち上がると、ドーンとひときわ大きな音があたりに響き、夜空がキラキラとなないろに瞬いた。 「不吉な色だ」 青空さんと地竜さんの声がハモった。 「あの日の夜を思い出す」 「そうか、お前もか」 ふたりして険しい表情を浮かべ藍色の空を見上げた。 「大陸にいた頃ちょっとな」 言葉を濁す地竜さん。それ以上のことは話してはくれなかった。 「花火工場が火事らしい。未知、風邪をひいたりしたら大変だからもう中に入れ」 彼が心配顔で駆け付けてくれた。 「陽葵もすっかり目が覚めたか。これだけ大きな音がするんだもんな。おちおち安心して寝ていられないよな」 彼が苦笑を浮かべた。ふと見ると太惺と心望も布団の中でモゾモゾと動いていた。 「うちの子たちはこれだけ賑やかでも寝ているんだもの。将来大物になるかもね」 お手手を万歳して熟睡する晴くんと未来くんの寝顔を眺めながらナオさんがクスクスと笑った。

ともだちにシェアしよう!