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番外編どっちが子どもなんだかわからないね

「市内に花火工場があったなんて全然知らなかった。ナオさんは?」 「僕もはじめて知った」 「火薬の違法貯蔵じゃないかとかいろんな噂が出回っているが、火元は事務所がある建物で無人で火の気がないところから出火しているから放火かも知れない」 「大量の火薬を盗むには花火工場が一番手っ取り早いからな。物騒な世の中になったものだな」 地竜さんがやれやれとため息をついた。 「社長の浅井さんとは仕事上の付き合いがあったんだ」 信孝さんも様子を見にきてくれた。 「アルバイトを二人その花火工場に派遣している。浅井さんは出店さんと旧知の仲だ」 信孝さんが晴くんと未来くんを起こさないように二人が寝ている布団のわずかな隙間にごろんと横になると、さっそく子どもたちの手と足が顔に飛んできて、晴くんが寝返りをうち信孝さんの顔にお尻をぺたっとつけると、その直後ぷぷぅ~となんともかわいらしいおならの音が聞こえて来た。これには堪えきれずにナオさんがぷぷっとふき出した。 「地竜さんに添い寝してもらっていた時はすごく大人しく寝ていたんだよ。パパに代わったのもしかして分かったのかな?」 「抱き心地も触れる手の感触も匂いも微妙に違う。ナオ、さっき気付いたんだが」 そこで言葉を一旦止めると、じっとナオさんを見た。 「この布団とナオが寝ているその布団さっきまでねっぱっていたよな?なんで離れているんだ?」 「気のせいだよ」 「気のせいなんかじゃない。この目で確認したから間違いない」 口喧嘩をはじめた二人に彼が、 「信孝、ナオだってたまには焼きもちを妬くときだってある。堪忍袋の緒が切れるときだってある」 ボソッと呟いた。信孝さんのことだから地竜さんがいないことをこれ幸いとばかりに彼にねっぱって寝ていたのだと思う。彼の言葉にぎくりとする信孝さん。

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