3309 / 3574
番外編どっちが子どもなんだかわからないね
「ハチ、花火工場の火災はどうなった?」
「まだ完全に鎮火には至っていない。ヤスがたまたま現場にいて職質された」
「ヤスが言うには見るからに挙動不審な男をディスカウントストアーで見掛けてあとをつけたら火災の現場に出くわした」
「そうか。寝ずの番で一睡もしていないんだ。少し寝たらどうだ?未知には俺がいる。心配するな」
「心配するなと言われてもそれが心配なんですよ」
「どういう意味だ?」
「さぁ~どういう意味でしょうね」
蜂谷さんがクスリと笑った。
「優輝そろそろ起きないと遅刻するよ。学校休むの?」
めぐみちゃんが毛布を勢いよく捲った。
「頭が痛いの」
優輝くんがめぐみちゃんから毛布を取り返すと頭からすっぽりと被ってしまった。
「朝からいろいろあったから臍を曲げているんだろう。俺があとから連れて行くから一太と奏音と一緒に先に学校に行け」
見るに見かねた地竜さんが声を掛けた。
「ねぇ優輝、なんで甘えん坊になっちゃったの?前は違ったよね?」
「いままでお兄ちゃんとして男として妹二人をそれこそ命がけで守ってきて、弱音も吐かずに懸命に頑張って来て、甘えたくても泣きたくても今までずっと我慢してきたんだ。今はうんと甘えて駄々をこねさせてやろう」
「それはそうなんですけど……」
ちらちらと優輝くんを見るめぐみちゃん。
「いいなぁ、優輝は。私だって甘えたいのに」
寂しそうにぽつりと呟いた。
「じゃあ両手に花でデートでもするか?橘と柚原に俺から頼んでやる。優輝は俺に付き合え。これは男の約束だ」
ともだちにシェアしよう!