3311 / 3575
番外編どっちが子どもなんだかわからないね
シフォンケーキ屋さんの前を通りすぎようとしたら、
「見れば見るほど楮山に似てますね、その子……」
テラス席に座っていたのは東京に帰ったはずの森下さんだった。
「柚原さん、失礼ですがそちらの方は?」
森下さんがまるで全身を舐めるように地竜さんをじろじろと見た。
「僕のお医者さんだよ」
優輝くんが地竜さんの前にすっと出た。
「いいね、その顔」
長い脚を組んで、手の甲に顎を乗せる森下さん。
「そしてその目つき、楮山にそっくりだ」
優輝くんの顔をうっとりと見つめた。でもすぐに表情が一変した。
「楮山と九鬼のせいで数えきれないくらい大勢の人が不幸になった。その子には楮山と同じ血が流れている。蛙の子は蛙。その子も大きくなれば楮山と同じように大勢の人を不幸にする。ですから芽は小さいうちに摘んでおかないと」
憎悪に目を光らせわなわなと声を震わせながらポケットに手を入れた。
「優輝に指一本でも触れてみろ。縣一家が黙ってはいない」
柚原さんが森下さんを睨み付けた。
「縣一家?」
森下さんが狂ったように笑い出した。
「何がそんなにおかしいんだ?」
「べつに」
森下さんはナイフを取りだした。一瞬の隙をついて地竜さんは優輝くんの手を引っ張るとすぐ目の前の小学校へと駆け出した。用務員さんがちょうど校門を閉めようとしていた。
ともだちにシェアしよう!