3314 / 3486

番外編どっちが子どもなんだかわからないね

森下さんは眉一つ変えず話しをじっと聞いていた。 「こころやすやぎの幹部だった瀧田さんによく似ているなとは思ったんです。他人の空似かと。なるほどそういうことですか」 「白雪さんが惨い死に方をしたから次は俺の番だとでも思ったんべ。野良仕事をほっぽっていなくなっちまった。さっきいた弟の宏がうっちゃしいあんにゃがいないうちと畑をうっぱらったんだ。不愉快千万」 気色ばむ鈴木さんを、 「ごせっぱらを焼いてもしょうがない」 柚原さんが宥めた。 瀧田さんの両親とともに病院へと向かった瀧田さんを見送ったのち、 「戻って来て良かったな」 「思わぬ収穫があって良かったな」 腕を組み微動だにしない森下さんに二人が声を掛けた。 「収穫なんてありません。私は楮山の息子の息の根を止めに来ただけです」 「なにがあっても優輝は殺させねぇ。森下、サツに捕まったらお前が面倒をみている子どもたちは誰が面倒をみるんだ?一度ならずも二度も肉親を失う悲しみを味わせるな」 柚原さんが語気を強めた。 「さっき聞き捨てならないことが聞こえて来たんだが」 ポケットに手を入れて颯爽と姿を現した彼。 「いいか森下、誰が何と言おうと優輝は縣遼成の甥だ。菱沼組と縣一家だけではなく昇龍会そのものを敵に回すことになる。それを忘れるな」 「縣さんで思い出したんですが縣一家は楮山の息子だけではなく、とんだお荷物も引き取ったのでしょう?縣さんも大変ですね」 森下さんが棘のある言い方をした。奏音くんのことを指しているのは明白だった。 「遼成は先代とは違い、家族を何よりも大切にしている。愛妻家で無類の子ども好きだ。だから根岸は孫の幸せを願い、大事な孫を遼成に託したんだ。根岸の孫は縣一家のお荷物なんかじゃねぇぞ。宝だ。森下良かったな、ここに縣一家の若いのがいなくて」 いらだちを和らげようとして鋭い指摘をする彼。

ともだちにシェアしよう!