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番外編 サクラ

「遥琉さんたちがいないことを知っているから、地竜さんを捕まえるために堂々と乗り込んで来たんですか?」 「恐らくそうだと思います」 大山さんから違う案件で身動きが取れないと彼のところにわざわざ連絡があったのは今朝のことだ。今思えば警告だったのかも知れない。 鞠家さんと青空さんが玄関に行くと、彼くらいの年齢の男性が紙袋をぶら下げて片手で携帯を弄りながら待っていた。若い衆に囲まれていてもなんら動じることはなく、ただの店員ではないことは明らかだった。 マクスをして眼鏡をかけた男性を一目見て鞠家さんはその人が誰かすぐに分かった。 「身内の恥か。お前も若井や佐瀬と同じことを言うんだな」 鞠家さんがポツリと呟いた。 「甲崎には甲崎の生き方があるように、玲士には玲士の生き方がある。安定した公務員を辞めてヤクザになったのも玲士が自分で決めた道だ。他人にとやかく言われる筋合いはない」 「高行、刑事を辞めたことを後悔しているなら、俺に協力してくれないか?」 「俺とハチは何があってもお前のエスになんかならないよ。おやっさんもな。他をあたってくれ」 「俺とお前の仲だろ?同郷のよしみで頼むよ」 「用がないならさっさと帰れ」 「相変わらず塩対応だな」 しっしと手で追い払われても、それでも鞠家さんの腕を掴もうとする男。 「鞠家はみんなの鞠家だ」 青空さんが鞠家さんの後ろから抱きつき男から引き離した。 「忠告する。カシララブの若いのに喧嘩を売らないほうが身のためだ。俺もカシラが大好きだから、独り占めしたら許さん。暴れるぞ」 全身髑髏の刺青を見て男がぎょっとした。 「そんなに珍しいか?」 「いや、別に」 思わず後ろに下がった。

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