3324 / 3632
番外編サクラ
「鞠家さん、組事務所に行かないんですか?また呼び出しの電話が来ますよ」
「おやっさんから根岸さんの手伝いをしてくれと頼まれたんだ。なにをすればいい?」
「千里と鞠家さんの携帯に写真を送りました。一年くらい過去に遡り弁護士を騙る男が関わったとされる特殊詐欺事件を調べて欲しいんです」
「調べ事は得意だ。任せておけ。事務所に戻って……」
鞠家さんが何気に下を見ると太惺が足にしがみついていた。親指を咥えて目をウルウルと潤ませじっと鞠家さんを見つめていた。
「ごめんな、遊んでやりたいのはやまやまなんだがおじちゃんこれからお仕事に行かないといけないんだよ。ハチと青空に遊んでもらってくれ。抱っこしてやるからそれで我慢な」
鞠家さんが太惺を片手でひょっいと抱き上げた。
抱っこしてもらうなり服にしがみついて、ふぎゃー、ふぎゃーと火がついたように泣き出す太惺。
「分かった。分かったから頼むから泣かないでくれ。五分だけ遊んであげるから」
子どもたちの涙にはめっぽう弱い鞠家さん。
「たいくんもなかなかの役者だな」
「さすがは遥琉のDNA を受け継いでいるだけはあります」
「カシラもカミさんと子どもの涙には弱い。やはり人の子だったか」
根岸さんと橘さんの会話を吉村さんはきょとんとして聞いていた。
ともだちにシェアしよう!