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番外編 命知らずの度胸と根性
「さっきからニタニタと笑ってなにをぶつぶつと独り言を言ってるんだ?傍から見たら完全に不審者だぞ。通報されても反論出来ないぞ」
「さ、佐治さん何で?」
驚いてすっとんきょうな声をあげる玲士さん。
「何でって玲士が心配だから見にきただけだ。決してヤス兄貴に頼まれたからじゃない」
「佐治さんとヤスさんに心配してもらえるなんて。果報者です」
「だから違うって」
佐治さんが校庭をじっと眺めた。
「森下は?」
「戻ってくるかと思ったんですが行ったきりで
戻ってきません」
「そうか。覆面パトカーにピタリとあとをつけられて振り切るのに一苦労した。玲士、カシラから連絡が来てないか?どうした?デカイため息なんかついて」
「こんなんでオヤジの息子がつとまるのか自信がなくなってきました。俺のせいでオヤジの顔に泥を塗らないか、幹部たちにお前みたいな青二才の若造がとか、余所者がとか、オヤジの息子になったからって意気がってんじゃねぇぞとか言われませんか?」
佐治さんがふぷっとふき出した。
「真面目に言ってるのに笑わないでくださいよ」
「悪いな、笑ったりして。悪気があった訳じゃないから許してくれ。逆だ」
「逆?」
「オヤジの婿になりたいと真っ先に手を挙げたその命知らずの度胸と根性に、たいしたもんだと幹部たちは感心している。だからもっと自信を持て。自分とあんちゃんとカシラを比べるな。ほら背中が丸まっている。背筋を伸ばせ、シャキッとしろ」
佐治さんは手加減して軽く背中を叩いたつもりでも玲士さんにとってはかなり痛かったみたいでうめき声をあげて悶絶していた。
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