3330 / 3632
番外編命知らずの度胸と根性
「ねえさん、玲士のヤツお手柄ですよ」
「さすがはオヤジが婿に見込んだだけはありますよ」
若い衆が口を揃えて玲士さんのことを褒め称えていた。
「ねえさん大丈夫ですか?」
「あ、は、はい」
地竜さんの無事だのメールにほっとしたのも束の間、しばらく姿を消す。というメールが続けて送信されてきて心配で若い衆の声が耳に入ってこなかった。
「すみませんぼおっとして」
「地竜は不死身です」
「心配無用ですよ」
「そうですよね、みんなの言う通りですよね」
携帯をポケットにしまった。
「写真の弁護士が何者か分かったんですか?」
「名うての詐欺師でした。それに生活保護費を不正に受給し区から訴えられた過去があります」
「玲士も何回か会ったことがあるみたいです。顔を見たらすぐに名前が出てきました」
「玲士さんは?」
「佐治兄貴と一緒に小学校にいます」
「兄貴が一緒なら心配ないですよ」
「そうですよね」
ふと青空さんの言っていたことを思い出した。シフォンケーキ屋のスタッフが最近ころころと変わるから名前を覚えきれない。公安の刑事さんはなんでお店の刺繍が入ったエプロンを身につけていたんだろ?刑事さんの協力者がもしスタッフで瀧田さんを監視するために潜り込んでいるとしたら?いや、違う。最初から優輝くんたちが狙いだった。
気付いたときには携帯を取り出して光希さんに電話を掛けていた。
「公安の刑事さん、吉田と名乗る男のひとが来て、楮山さんの血筋はすべて根絶やしにしないといけないって。それで」
話したいこと、聞きたいことがたくさんありすぎてパニックを起こし掛けていた僕に、
ー未知、落ち着いて。ゆっくりでいいよー
光希さんは優しく声を掛けてくれた。
ともだちにシェアしよう!