3331 / 3632
番外編命知らずの度胸と根性
「今から思えば最初から腑に落ちないことばかりだったんです。何で優輝くんたちが楮山さんの子どもだって吉田さんと森下さんが知っているのか、ずっと気になっていたんです。だって柚さんから、優輝くんとめぐみちゃんが産まれる直前に一央さんと籍を入れた、このことはほんの一握りの人しかそのことを知らないはずだって。聞いていたから。じゃあどうして知っているのか、いくら刑事さんでもそこまで調べる権利はないです。ましてや幸ちゃんと譲治さんに銃を向けていい訳がない。考えたくはないけど一央さんが吉田さんに弱みを握られていて、何らかの取り引きをして、それで出生の秘密を話したとしたら?」
ー本当に考えたくはないけどね。その可能性が十分あり得るから怖いよねー
光希さんがため息まじりにポツリと呟いた。
ーここだけの話し。一央さん行方不明なんだ。未知と遥琉には嘘をつきたくないから正直に話すねー
「光希さん、遥琉さんはまだ帰ってこないです」
ーあれ?変だな。視線を感じない?ー
光希さんに言われてはじめて誰かにじっと見られていることにようやく気付いた。誰かってひとりしかいないんだけど。ドキドキしながらそっと後ろを振り返った。
「ただいま未知。こそこそと隠れて誰と喋っているんだ?全然気付いてくれないからひと暴れしようかと思っていたんだぞ」
嘘かまことか、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべる彼。
ー遥琉、未知に変なことしたら怒るからねー
「その声は光希か。久し振りだな」
ー久し振りではないと思うんだけどなー
「そうか?」
彼に後ろからぎゅっと抱き締められた。
ともだちにシェアしよう!