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番外編すっかり雲隠れしてしまった一央さん
「今まで寝ている未知さんに悪戯ばかりしていたのに。最近は疲れている未知さんをなるべく起こさないように寝顔を静かにただ眺めているだけなんですよ。それだけで十分幸せだって。遥琉も見ないうちに成長しましたね。少しは大人になったのかもしれませんね」
橘さんが感慨深げにそう言うと静かに部屋を出て行った。
りょうお兄ちゃんが警察から戻ってきたのは、あたりが暗くなりはじめたころだった。
「ずいぶんと時間がかかったようだな。心配したぞ」
ー兄貴、悪い。任意同行されて根掘り葉掘り、いろいろと聞かれたんだが結局のところ嫌疑なしだ。俺は一央に訴えられるようなことはなにもしていない。喧嘩は日常茶飯事だが今まで一度も光希に手をあげたことはない。すぐに帰れると思ったんだが二時間近く事情聴取された。帰ろうと思ったら今度は甲崎と国井に捕まった。また質問責めにあった。今日は厄日だー
「そうか。それは災難だったな」
ーこれから帰って光希に癒してもらうつもりだー
「遼が留守中、龍が遼の代わりに公安と堂々と渡り合っていたらしいぞ。たまには誉めてやれ」
ー兄貴がそう言うなら。分かったー
吉田さんと森下さんの話しになると彼の表情が変わった。りょうお兄ちゃんも今回ばかりはどうも腹の虫がおさまらないと。でもことを起こせば公安の思うつぼだ。今が我慢のときだ。彼なりに言葉を選びりょうお兄ちゃんを宥めていた。
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