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番外編すっかり雲隠れしてしまった一央さん

「玲士、今日はありがとうな。助かったよ。ゆっくり休んでくれ」 「へ?」まさか彼から直々に労いの言葉を掛けてもらえるとは思っていなかった玲士さん。きょとんとしていた。 「あ、そうだ。肝心なことを言い忘れていた。玲士、縣一家の組長からの言伝てだ。このまま福島にとどまり、婿修行に勤しみ、甥と姪たちを守ってくれ、だそうだ。くれぐれも誤解するなよ。邪魔になったからではない。きみは縣一家にとってなくてはならない必要不可欠な人材だ。でもそれは菱沼組にとっても同じことだ。玲士、ヤスと佐治からいろいろと教えてもらえ」 「いいんですか?」 「いいに決まってる。二言はない」 お酒の席で酔っぱらった玲士さんが東京に帰りたくない。亜優のそばにいたんだと駄々をこねていたと若い衆から聞いていた彼。 りょうお兄ちゃんと話し合い、玲士さんを菱沼組でもらい受けることにした。拍子抜けするくらいあっさりと決まった。 「ここで暮らすことになった。一言でいいから甲崎にちゃんと連絡しろよ。亜優もいるし、同世代が多いから気の合う者同士話しも弾むだろう。過足も積もる話しがあるみたいだから相手をしてやってくれ。食費がひとり分増えたってたいしたことない」 「ありがとうございます。死ぬ気で頑張ります」 玲士さんは腰を九の字に曲げ下げられるところまで頭を下げた。 「ありがとう。オヤジに言ってくれて。お陰でここにずっといれることになった」 行く先々で会う若い衆一人一人に声を掛けて頭を下げる玲士さん。

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