3350 / 3580
番外編スペシャルサプライズ
「頑固なのはじいちゃんにそっくりだな」
「そういえば悪いところばかり似て困ると嘆いたな」
「根岸と一緒に行かなくて本当に良かったのか?」
「玲士が側にいるとはいえ、亜優に心許ないからいてくれと頼まれたからな。約束を反古にする訳にはいかないだろ。それに菱沼金融も休みにする訳にはいかないからな」
ふと庭に目をやる伊澤さん。
彼と伊澤さんがいることに気付いた譲治さんが庭掃除そっちのけで手を大きく振っていた。
「こんな俺でも必要としてくれる人がいる。それがどれだけありがたいか」
感無量といった面持ちで微笑む伊澤さん。
「吉田さんと決着をつけるために会いに行くんですか?」
誰にも気付かれないように帽子を被りマスクをして裏口から外に出ようとした伊澤さん。そっとしておけ、そう彼には言われたけどいてもたってもいられずあとを追い掛けて声を掛けた。
「アイツの行動は目に余る。手柄を立てるためには子どもの命さえ軽視する。それがどうしても許せなくてな。ねえさん、これは俺と吉田の問題だ。見なかったことにして黙って送り出してくれないか?」
ただ前だけを見詰め、伊澤さんが淡々と言葉を紡いだ。
「手のかかる部下ほど可愛いからな。ちっとばっか甘やかしすぎたかな」
自嘲するとため息をひとつついた。
「伊澤さん、根岸さんが帰ってくるまで帰ってきてくださいね。遥琉さんと子どもたちとみんなと待ってますから」
「未知さん……いや、ねえさん。ありがとう。じゃあ、ちょっくら行ってきます。亜優と譲治を頼みます」
軽く右手をあげると外へと出ていった。一度も振り返ることはなかった。
ともだちにシェアしよう!