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番外編予期せぬ接点

「卯月の身に何があったのか?」 「いえ、違います」 「じゃあ、伊澤のほうか」 言いにくいのか、首を横に振る若い衆。 「まどろっこしいな。言いたいことがあるならハッキリ言え。聞いているこっちがイライラする」 「すみません。縣一家の組長が乗った車が何者かに狙撃されたとついさっき連絡がありました」 「そうか。恐れていたことがついに現実になったか」 度会さんが腕を胸の前で組んだ。 「光希を人質に取られたら遼成も龍成も手も足も出ない」 「襲撃されるのを予想して光希をこっちに避難させた、ということですか?」 「まぁ、そうだろうな。玲士、コウジさんや、過足さんたちを見送ってくれ。これ以上カタギの皆さんを巻き込む訳にはいかないからな」 「度会さん、彼らは」 「分かってるよ」 玲士さんと車田さんは一切目を合わせなかった。なんともいえない気まずい空気が流れていた。そそれを知ってから知らぬか、コウジさんが茶々をいれてかふらかっていた。 「公安は自分たちの手柄にしたが、鷲崎組が仙台から撤退したのはこれ以上一般市民を揉め事に巻き込まないようにするため。犠牲者を増やさないため。鷲崎とっても苦渋の決断だった」 「そう言えば甲崎も言ってたな。昔と比べてやりにくくなったってな」 電話で鞠家さんから一通り説明を受けた彼。 家に帰ってくるなり鞠家さんと膝を突き合わせて神妙な面持ちで話し込んでいた。

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