3362 / 3482

番外編予期せぬ接点

「俺がこっちにいるから遼が実質本部のナンバー2だ。だから公安に目を付けられたんだろう」 「遼成さんも龍も覚悟を決めている」 光希さんが居間に入ってきた。 「考えたくもないけれど、ふたりにもしものことがあれば、奏音が一人前になるまで裕貴が後見人になる。僕はこの命に代えても奏音を守らないといけない。縣一家を継いでほしいけど、強制はしたくない。無理もさせたくない。奏音の気持ちを大切にしてあげたい」 「光希も俺と同じことを考えているんだな」 彼が感慨深げにため息をついた。 その時、りょうお兄ちゃん本人から光希さん宛に無事だから心配するなとメールが送信されて来た。 「嘘をつくのが本当に下手なんだから」 光希さんが暗く悲しげに呟いた。 「現役のデカがこれだけ大きな騒ぎを起こしたんだ。大人なら逃げずにちゃんと責任を取るのが筋だろう。とは言ったが、それ以外は別に何も言っていない」 吉田さんが県内のとある警察署内のトイレで拳銃自殺を図ったという第一報が飛び込んできたのはお昼過ぎのことだった。 「昔の面影はこれっぽっちも残っていなかった。世間の荒波に揉まれ別人のように変わってしまった。森下が行方知れずになってかなり焦っていた」 「余計なことを喋らないか、それが心配なんだろう。どこまでも自分勝手な男だ」 「オヤジ、煙草を吸ってくる」 伊澤さんが背広の内ポケットから煙草と携帯灰皿を取り出した。

ともだちにシェアしよう!