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番外編予期せぬ接点

「佐治、悪いな。煙草はもう吸わないことにしたんだ」 「嘘だろ?ベビースモーカーのお前が。どういう心境の変化だ?」 覃さんが驚いたような声をあげた。 「もしも四季が妊娠したと仮定する。妊婦本人が喫煙しなくても、まわりの人の喫煙によって煙草の煙にさらされる受動喫煙っていうのが問題になっているだろ?胎児の発育などに悪影響が生じたり、乳幼児突然死症候群の要因になったり、低出生体重・胎児発育遅延との関連も指摘されている。根岸さんが組事務所や菱沼金融など、あちこちに禁煙の張り紙をベタベタ貼っているその意味を頭では理解していても、ぶっちゃけウザいとしか思っていなかったが、もしも四季が妊娠したらと考えたときようやく根岸さんがなにを言おうとしていたかようやく分かったんだ。受動喫煙から四季を守らないとな」 「へぇ~~変われば変わるものだな」 「だって俺、四季の親代わりだし。あ、そうだ、さっき言ったことは根岸さんには内緒にしててくれ。もしバレたら一発ぶん殴られる」 ヤスさんがビクビクしながらあたりをキョロキョロと見回した。 「良かった。いなかった」 伊澤さんの姿がないことを確認し、ほっと胸を撫で下ろしたヤスさんだったけど、 「しっかり聞こえているぞ」 薄闇の中から伊澤さんの声が聞こえてきたものだから、うわぁ~~と飛び上がるくらいヤスさんが驚いていた。

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