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番外編予期せぬ接点
遥琉さんにぎゅうぎゅうと抱き締められて、幸せな苦しさに眩暈を感じていた。
この腕の力がそのまま愛の強さなら今このまま抱き潰されててもいいと思えるくらいに。
とろけるような幸福感を感じ、うっとりとして目を閉じると、唇にあたたかな何かが触れてきて。
瞼をあげると、もう一度口付けられた。
「遥琉、たとえ未知さんがそう望んだとしても、決して抱き潰してはいけませんよ。未知さんは一人しかいませんからね」
「わ、分かっているって。てか、いつからそこにいるんだよ」
ぐすりながら目を擦る太惺を抱っこしてあやす橘さんと目が合い、彼があわてて飛び起きた。
「いつからって十分ほど前からですよ。たいくんの泣き声が聞こえたので様子を見にきたんです。未知さんも熟睡していましたし、気付きませんでしたか?」
うん、と言わんばかりに大きく頷く彼。
「私なんてこれっぽっちも眼中にないのは分かっていますよ。あなたにとって私は空気みたいな存在ですからね。寝ている未知さんをわざわざ起こして何をするかと思ったら。大人げない。でもまぁ、じっくりと観察することができたので満足です。続けるならどうぞ。私とたいくんのことは気にしなくていいですよ」
橘さんがにっこりと微笑んだ。その笑顔に彼の表情は凍りつき震え上がっていた。
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