3379 / 3632

番外編予期せぬ接点

「ここに弓削さんがいればなぁ」 何気に呟くと、 「若いのに危険回避術のイロハを一から叩き込むのは弓削の役目でしたからね」 「柚原さん、ごめんなさい」 「なんでねえさんが謝るんですか?俺が弓削の代わりに玲士にみっちり叩き込みますよ。弓削が帰ってくるまで婿として恥ずかしくないくらいになっていれば上等でしょう」 「憧れの柚原さんにご教授していただけるなんて嬉しいです」 破顔する玲士さん。ヤスさんと佐治さんが頑張れ新入り、応援しているぞって励ましていたけど、ただひとり、覃さんだけは、 「いいなぁ、柚原を独り占めして」 なぜかへそを曲げていた。 「お前にはジョーがいるだろ?」 「ジョーは青空とハチとラブラブ。俺よりお似合いだ。それに鍋山もいるし。近いようですごく遠いんだよ」 ため息まじりにそんなことを口にすると、 「ハチと青空はなんだかんだいいながらも譲治の面倒をみて可愛がってくるからな。譲治もそれが分かるんだろ?今までただ遠くから見ているだけで絶対に動こうとはしなかったが、最近は自分から二人に声を掛けるようになったし、一緒に出掛けるようにもなった。自分の殻に引きこもりがちだったのにそれと比べたらずいぶんと成長した。譲治は頑張っている。だから覃も頑張れ。弱気になるな。お前らしく強気でいけ」 柚原さんが明るく励ますと、覃さんの目がキラキラと輝きだした。

ともだちにシェアしよう!