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番外編予期せぬ接点

「ねえさんの言う通りかなもな」 蜂谷さんが後ろを振り返りくすりと笑った。 「柚原は相変わらず消毒液の匂いが駄目なんだな。すごい顔をしている」 「だってしょうねぇだろ。誰だって苦手なものはあるだろ」 鼻を手で押さえ苦悶の表情を浮かべる柚原さん。 餡まんを覃さんに渡したとき手のひらと膝を擦りむいたことが分かり、縁側に座らせて消毒液で消毒することになった。 「譲治さん、大丈夫?」 「ひりひりするなっては思っていた。白なのになんで赤いのかなっても思っていた」 「意外と気付かないものだよ」 足をぶらぶらさせて、 「動く、良かった」 ほっとして胸をなでおろしようやく笑顔を見せてくれた。 「驚かせるつもりはなかったんだ。トイレから出たとき、大山の部下がと聞こえたような気がして。空耳だったようだな。邪魔して悪い」 広間に戻ろうとした大山さん。 「最初から全部聞いていたんだろ?」 度会さんに不意に声を掛けられてどきっとして立ち止まった。 「こんなところで油を売っている暇があるなら、さっさと追い掛けたらどうだ?サツとの揉め事はごめんだ。こっちは穏便に済ませたいと思っているのにそっちから喧嘩を吹っかけてきて、しまいには公務執行妨害で現行犯逮捕する魂胆だろ?違うか?それとこれは忠告だ。伊澤をおやっさんと呼んで慕っている若い衆は多い。帰り道気をつけろよ」 庭掃除をしていた若い衆がぽきぽきと指の関節を鳴らしながら一人、また一人と集まって来た。 「俺がここに来た目的は吉田の件で卯月さんに会うのと、千ちゃんに頼まれたことがあったからだ。未知さんの笑った顔を見て来てほしいと頼まれたのに……悲しませてばかりいる。不甲斐ない」 深いため息をつくと力なく頭を垂れた。

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