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番外編予期せぬ接点
「何を言ってんだ」
「惚けるな」
「惚けていない」
「大山に化けるなら、もうちょいうまく化けられなかったのか?」
「だから俺は正真正銘、本物の大山だ。いい加減にしろ。そんなに俺を怒らせたいのか?」
威張ってのけぞった姿勢になる大山さん。
「良かったな」
「何がだ?」
「腰が痛いと言ってただろ?」
「そんなこと一言も言った覚えはないぞ」
一瞬間が空く大山さん。明らかに動揺していた。
「卯月は未知しか眼中ない。好みの男がいないから野郎にはこれっぽっちも興味がない。だから簡単に騙せるとでも思ったか?上手く丸められるとでも思ったか?」
覃さんが淡々と言葉を返した。
「ねえさんと光希には指一本触れさせない」
「へぇ~~」
大山さんがにやりとほくそ笑んだ。
「目の前に旨そうな標的がいるのに。見逃せと?実に勿体ない」
ポケットにすっと手を入れた。
「あれ、ない」
中をごそごそと探る大山さん。そこに入っていたものがなくて焦りはじめた。
「お前が探しているのはこれだろ?」
柚原さんがボールペンを取り出すと人差し指と中指で挟みくるくると回した。
「見た目は普通のボールペンだが中身はナイフだろ?どうせ刃の先に毒でも仕込んであるんだろ?」
矢継ぎ早に追求され、苦虫を噛み潰したような顔になる大山さん。
「大山と吉田の名前は偽名だ。ほんとうの名前は誰も知らないし、ほんとうの顔も知らない。それをいいことにまんまと大山に成り代わったようだが、悪事はいつかバレるぞ」
「バレねぇよ」
大山さんが声を張り上げ、口のなかをモゴモゴと動かした。
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