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番外編七夕
「光希さん、外で何が起きているんですか?」
「死神の幹部と公安が一緒にいるんだもの。犯人にとっては鴨が葱を背負って来たまたとないチャンス。柚原も家の中だし。これを逃す手はないでしょ?」
「警備があれだけ厳重なのになんで……あ、もしかして……」
真っ先に頭に浮かんだのはタクシー運転手だった。初めて見る顔だって若い衆が話していた。不審な素振りは全く見せず、待てど暮らせど大山さんが出て来なくて、手持ち無沙汰になり煙草を吸っていたみたいだけど。
「覃はやたらと鼻が利くから大丈夫。普段俺たちに見ている顔はほんとうの顔じゃないから。それに大山さんも自分の身くらいは守れるから。心配しなくても大丈夫」
「過足さんと車田さんたちは?巻き込まれていないかな?」
すごく嫌な予感がしてならなかったけど、
「コウジの子分たちはみんな怖いもの知らずだから。心配しなくても大丈夫」
光希さんの余裕がどこから来るのか。そっちのほうが怖かった。
「今年も雨だね」
「さっちゃんたちが怖がるからてるてる坊主も作れないしね」
「困ったね」
子どもたちがため息をつきながら空を見上げていた。
「そんなにがっかりしなくても、午後から晴れますようにって短冊に願い事を書いて飾ればいいんじゃないか?石井さんと安川さんが青空の身長と同じくらいの大きさの笹の葉っぱを二本も持ってきてくれたんだし」
今朝太惺と心望に本物の笹の葉を見せたいと石井さんたちが軽トラの荷台に積んでわざわざ持ってきてくれた。
「今日はみんなが大好きな橘の誕生日でもあるからな。サプライズで盛大に祝ってやろう。橘はあぁ見えてツンデレで恥ずかしがり屋だからこのことは内緒な。あっと驚かせてやろうな」
「はぁ~~い!」
競うようにちいさな手が次から次に上がった。
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