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番外編七夕
「お、今日は七夕か。二週間以上入院していたからな、日にちと曜日の感覚がなくてな、参ったな」
頭に包帯を巻いた大山さんが鞠家さんと蜂谷さんに付き添われて姿を見せた。
「俺はてっきり意識不明のままあの世に行くかと思ったぞ」
青空さんがからかうように悪戯っぽい笑みを浮かべると、
「千ちゃんより先に死ぬわけにはいかない。それに甲崎と斉木と三人でこれからもずっと千ちゃんを守るって男の約束をしたんだ。反故にするわけにはいかない」
「千里への愛は海よりも深いということか。なるほどな」
「大山、退院祝いに……」
彼が声を掛けると、
「卯月さん、俺はもう公安の大山じゃないよ」
大山さんがどこか吹っ切れたような、そんな表情を見せた。
「確か、細谷だったな」
「あぁ。これからは呼び捨てで呼んでもらっても構わない」
「分かった」
彼が大山さんのために用意したのは酒樽だった。
「本部の幹部たちはみな酒豪だ。張り合おうなんて考えるなよ」
「嗜む程度にしておく。でもまさか夢が叶う日が本当に来るとは。残りの人生、この命、すべて千ちゃんに捧げる」
一ヶ月以上も前に大山さんが上司に出していた辞職願がようやく受理され、大山さんはお姉ちゃんのもとでいちから人生をやり直すことになった。
「弟から俺宛の手紙を預かってきてくれと甲崎に頼まれたんだが……」
玲士さんは飾り付けに夢中で大山さんが来たことに全く気付いていない。
「玲士、水もしたたるイケオジに呼ばれてるぞ」
青空さんに何度か声を掛けられてようやく気が付いた。
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