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番外編七夕

「たいくんには付き合っていられない。そんな感じですかね」 「この子はまわりに左右されず我が道を往くタイプなのかもしれません」 「たいくんとここちゃんって性格が逆ですよね。見てて飽きないし癒される。佐治も嬉しそうで良かった。ねえさん、佐治を頼みます」 「ヤスさんもう行くんですか?」 「あともう一ヶ所回るところがあって。もう一人の看板息子を連れていきます」 ヤスさんが爽やかな笑顔でゆきうさぎ丸に戻っていった。 「あっ!」 また何かを見つけた太惺。ニコニコと満面の笑みを浮かべながら急に走り出した。 「転ぶから走っちゃダメだよたいくん」 佐治さんが言った矢先、石に躓き転ぶ太惺。 泣くかと思ったけどキョトンとしていた。 「たいくん大丈夫か?」 佐治さんがすぐに駆け寄ってくれて。手のひらや膝頭についた砂を手で払うと、脇の下に手を入れて抱き上げてくれた。そのとき片方の長靴が脱げた。 それが面白かったのか、それとも素足にスースーとあたる風がくすぐったかったのか太惺がキャキャと笑いだした。 「たいくんの笑いの壺がどこにあるのかさっぱりわからない。でも泣かれなくて良かった。たいくん橘さんのところに行こうか。膝を擦りむいているから見てもらおう。誰かたいくんの長靴を拾っておいてくれ」 その時人影が佐治さんのうしろにすっと現れた。 「悪いな」 「悪くないよ」 「み、光希さん。す、すみません、使ってしまって」 その人影は若い衆でなく光希さんだった。 「居候をさせてもらっているんだもの。気にしないで」 光希さんは長靴を拾うと両手で大事そうに抱えた。

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