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番外編七夕

「遥琉さん、くすぐったい」 「くすぐってないだろう」 「だって遥琉さんの手が……」 シャツの下からなかに潜り込んできた彼の手がただでさえ弱い脇腹と背中にぺたぺたと触れてきて。こういうときに限ってなぜか手がひんやりと冷たくて。それがまた余計にくすぐったくて。 彼を膝の上から落とさないように我慢していたけどもう限界だった。 そんなときバタバタと元気な足音が聞こえてきて。 「ただいま、あそんでくる」 ガラッと勢いよく戸が開いたものだからドキッとした。でも一太は僕と彼には一切目もくれず。ランドセルを畳の上に置くと、またバタバタと走っていってしまった。 「我が道を往くタイプがもうひとりいたな」 彼がクスクスと笑いだした。 「よし休憩終了。流し素麺をする準備でもはじめるか」 彼がむくっと体を起こした。 前髪がぴょんと跳ねていたから、直してあげようと手を伸ばしたら、彼の顔がぐいぐいと迫ってきた。 「遥琉さんどうしたの?」 「たまには至近距離で見るものも悪くないな」 何がと言いかけた唇が、彼の唇で塞がれる。 ーーちょっと待って。一太が戻ってきたらどうするの? 慌てて押しのけようとしたけど、彼はますますしっかりと体を抱き締めてくる。 「んっ、ん……んう」 彼の口付けは熱がこもっていて深い。 もどかしいほどゆっくりと彼の舌が動き、ふたりの唾液がねっとりと絡み合う。 ざらざらした舌で上顎をくすぐられ、彼のシャツをぎゅっと掴んだ。

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