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番外編七夕
「ん、んん」
混ざり合った唾液が唇の端から零れ、顎を伝う。
バタバタとまた足音が聞こえてきて。
見られたら大変だから。
必死に身をよじると、彼がやっと唇を解放してくれた。
「朝時間がなくて行ってきますのキスをしてなかっただろ?あとただいまのキスもまだしていなかったから。出来て良かった」
嬉しそうに笑うと、前髪を手であげて、おでこに軽くキスをしてくれた。
「ままたんたんじょうびおめでとう!」
遥香とめぐみちゃんと幸ちゃんがケーキを運んできた。
子どもたちが一つ一つ思いを込めてデコレーションしたカップケーキだ。
「みんなでつくったんだよ」
思いがけない贈り物に驚く橘さん。
「こんなにたくさんいいんですか?ありがとうみんな」
「おにいちゃんたちからもあるよ」
「でもまだ準備出来てなくて。ちょっと待っててね」
「分かりました」
厚い雲が夜空を覆い今年も天の川を見ることは出来なかったけど、庭では流し素麺をして楽しむ子どもたちの歓声がいつまでも聞こえてきた。
一太と優輝くんと奏音くんからのプレゼントは割烹着だった。光希さんと紫さんから手取り足取り教えてもらいはじめてミシンで直線縫いに挑戦した三人。
今日に間に合わないと紗智さんと那和さんと亜優さんも巻き込み、てんやわんやしながらもなんとか出来上がったみたいだった。
「橘が指輪をしているなんて珍しいね。初めてじゃない?」
光希さんが声をかけた。
「年に一回くらいはつけてあげないと駄々を捏ねられますからね」
「確かに」
くすりと笑う光希さん。
「来年こそ天の川見たいね」
「そうですね」
橘さんと光希さんが藍色の空を見上げた。
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