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番外編七夕

雨が降るなかぶつぶつと何やら一人言を言いながら笹の葉を見上げる長身の人影があったからドキッとした。 「覃さん、濡れますよ。もし良かったからこれ使ってください」 声を掛けようか迷ったけど玄関へ傘を取りに行き、すぐに戻ってきておっかなびっくり差し出した。 「悪いな」 「誰を待っているんですか?もしかして譲治さんですか?それとも宋さんですか?」 「誰も待っていない。ボスに頼まれたから」 携帯を掲げる覃さん。 「何もこんな暗いところで撮影しなくても。すぐには片付けないと思うので明日の朝、明るくなってからでも……」 ーそれじゃ遅い。七夕が終わってしまうー 携帯から地竜さんの声が聞こえてきたからドキリとした。 「もしかして通話中でしたか?」 「あぁ。短冊にボスに会いたいとみんなが書いてくれただろ?それを報告したら、全部読み上げろと。注文が多くて、困ったボスだ」 ー悪かったな注文が多くてー ぶすくれた声が聞こえてきた。 「一ヶ月後日本に帰る予定らしい。黒竜のアジトから助け出した赤ん坊を三人ほど連れてくるそうだ。ボスは光希と心なら引き取り先が見つかるまで赤ん坊の面倒をみてくれるんじゃないかと。問題は亭主だが」 覃さんが何かに気付き、人差し指を唇の前に立てた。 「噂をすれば影だな。このことは内緒だ」 何事もなかったようにまた短冊をよみはじめた。 「未知、ひまちゃん泣いてるよ」 そのすぐ直後光希さんが現れた。

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